「音痴だから歌ってみたは無理」と思って、録音する前にあきらめてしまう方はとても多いです。ただ、私たちが実際に録音とMIXの現場で見ていると、「音痴」と呼ばれている症状は、原因の違う3つがひとまとめにされていることがほとんどです。原因が違えば、やるべき練習も変わります。この記事では、自分がどのタイプなのかをスマホ録音で切り分ける方法と、タイプ別の直し方、そして音程のズレをMIXのピッチ補正でどこまで直せるのかを、正直な線引きでまとめます。
歌が外れる、という現象は「①正しい音を聴き取る」→「②その音を自分の声で出す」→「③正しいタイミングで出す」という3つの工程のどこかでズレると起こります。どこでズレているかによって、必要な練習はまったく別物です。
| タイプ | 起きていること | 本人の自覚 | 改善のしやすさ |
|---|---|---|---|
| ① 聴き取り型 | お手本の音の高さそのものを正しく認識できていない | ズレている自覚がない/指摘されて驚く | 時間はかかるが訓練の余地あり |
| ② 発声型 | 正しい音は分かっているのに、声がその高さに届かない・行き過ぎる | 「違う」と自分で分かる。歌っていて気持ち悪い | 比較的早い。もっとも多いタイプ |
| ③ リズム型 | 音の高さは合っているが、入りが走る・もたる | 音程は気にならないのに「なんか変」と言われる | 比較的早い |
なお、生まれつき音の高低の判別そのものが難しい状態(失音楽症)も報告されていますが、該当する人はごく一部とされています。「自分がそうかもしれない」と決めつける前に、まず次の切り分けテストをやってみてください。ほとんどの場合、②か③、あるいは後述する「キー違い」に落ち着きます。
用意するものはスマホだけです。判定を「感覚」ではなく「録音」で行うのがポイントで、これは腹式呼吸の確認やビブラートの判定と同じ考え方です。
ピアノアプリやオンラインチューナーで「ド」など1音だけを鳴らし、その直後に同じ高さを「アー」と声に出します。これをスマホで録音し、再生して聴き比べます。
同じ音を、今度は口を閉じて「ンー」とハミングで出します。
メトロノームを鳴らしながら、歌わずに手拍子だけを合わせて録音します。
現場でよくあるのが、本人の音域と曲のキーが噛み合っていないだけというケースです。高い音が続くサビでだけ外れる、Aメロは合っているのにサビで急に不安定になる、という場合はほぼこれです。声が届かない音を無理に出そうとすると、喉が締まって音程がぶら下がり、結果として「音痴」に聞こえます。
これは練習より先に曲側を合わせるほうが早く解決します。まず声の音域チェッカーで自分の出せる範囲を測り、音域が分かったら次にやることを参考に曲を選び直すか、キーを何音下げるかを決めてください。原曲のキーが分からないときはキーの調べ方とBPM・キー判定が使えます。hiAやmid2Gといった表記でつまずいた場合は音域表記の対応表をどうぞ。
いきなり歌の練習をしても遠回りになります。先に耳を作ります。ピアノで2音を鳴らして「どちらが高いか」を当てる、同じ音か違う音かを当てる、といった二択のトレーニングを毎日数分続けるのが基本です。合っているかどうかは自分では判断しにくいので、チューナーの表示や、正解を教えてくれる相手がいると進みが速くなります。改善には週単位ではなく月単位の時間がかかると考えてください。
いちばん多いタイプで、いちばん伸びやすいタイプでもあります。原因は、狙った高さに一発で声を置けず、出してから探って合わせにいっていること。ロングトーンとスケールで「置く」練習をします。詳しい手順はピッチを安定させる練習にまとめています。
メトロノームに手拍子を合わせる → 鼻歌を合わせる → 歌詞をつける、の順に戻します。特に「歌い出しが毎回わずかに早い」人は、息を吸うタイミングが直前すぎることが原因のこともあります。録音した波形を見ると自分のクセが一目で分かります。MIX側でのタイミング修正についてはタイミングがズレる原因と直し方で詳しく扱っています。
ここは正直にお伝えします。歌ってみたのMIXでは、Melodyneなどのピッチ補正で音程を修正するのが一般的です。ただし万能ではありません。
| 状態 | ピッチ補正での扱い |
|---|---|
| 正しい音の周辺で少し上下している(惜しいズレ) | 自然に直せます。もっとも得意な領域です |
| 語尾だけぶら下がる/伸ばすと下がる | 直せます。ただし直しすぎると表情が消えます |
| 半音〜全音まるごと違う音を歌っている | 動かせますが、声が不自然になります。録り直しを推奨します |
| ハモリと主旋律が混ざって別の音程になっている | 分離できません。録り直しが必要です |
| そもそも出ない高さを絞り出して歌っている | 音程は直せても苦しそうな声質は直せません。キーを下げるのが正解です |
| リズムのズレ | ピッチ補正とは別作業。ある程度は直せますが、全体が走っている場合は限界があります |
補正をかけすぎると、いわゆる「ケロケロ」した機械的な声になります。自然さを保ったまま直せる範囲には限りがあるということです。この線引きは自然なピッチ補正のコツとMIXで直せること・直せないことの境界線にさらに詳しくまとめています。
テストで分かったタイプに合わせて、次の順で進めます。毎日長時間やるより、短く毎日のほうが定着します。喉が痛いときは休んでください(喉のケア)。
ポイントは毎週、必ず録音を残すことです。自分の声は骨伝導の影響で実際と違って聞こえるため(録音した自分の声が違って聞こえる理由)、記憶ではなく録音で比べないと変化に気づけません。
年齢で不可能になるものではありません。②の発声型と③のリズム型は、大人でも練習で改善が見込めます。①の聴き取り型は時間がかかりますが、訓練の余地はあります。
採点は音程だけでなくビブラートやロングトーンの加点も含むため、点数と「音程が合っているか」はイコールではありません。判定したいときは、採点画面の音程バーが基準線に乗っているかだけを見てください。
録音を残していない可能性が高いです。歌っているときは骨伝導で自分の声が違って聞こえるため、その場の感覚はあてになりません。まずスマホで録って、聴き返してください。
②と③は独学でも進められます。①の聴き取り型と、「自分では外れているか分からない」状態の方は、正解を即座に教えてくれる相手がいたほうが確実に速いです。判断材料はボイトレ教室の選び方にまとめています。
もちろんです。実際、初投稿の方の音源はほとんどが「惜しいズレ」の範囲に収まっていて、MIXで自然に整えられます。完璧になるまで待つより、1曲出して現在地を記録するほうが上達は速いです(初投稿までの手順)。
「音痴だから」とひとまとめにすると打つ手がなくなりますが、聴き取り・発声・リズム・キー違いのどれなのかを切り分ければ、やるべきことは1つに絞れます。判定はすべてスマホ録音でできますので、まずは5分のテストから始めてみてください。そして音程は、MIXで「惜しいズレ」なら自然に直せます。完璧に歌えるようになってから、ではなく、今の状態を1曲残すところから始めるのが、いちばん確実な近道です。
関連記事(ボイトレ・歌唱)
「自分ではどのタイプか判断できない」という方は、YOU_MIXのボイストレーニングで、実際に声を聴いたうえで切り分けからお手伝いできます。録音環境が原因で音程が取りにくい場合は、北池袋のレコーディングスタジオで返しの整った環境を試してみるのも有効です。