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歌ってみたをTikTok・ショートに上げるときの音の作り方
スマホで埋もれない音量・尺・書き出し設定

2026年9月6日 公開 ・ 投稿・運用
YOUMIX 運営者(MIXエンジニア/ボーカルディレクター)のアイコン 監修:YOU_MIX ボーカルディレクター 東京・北池袋/歌ってみたMIX・ボーカルディレクション担当・累計3,000曲
スマートフォンで縦型のショート動画を再生しているイメージ

YouTubeだといい感じなのに、TikTokに上げた瞬間しょぼくなるんです

ここ1年、この相談がはっきり増えました。同じ音源です。同じMIXです。それなのに、ショート動画にした途端、音が小さく、平たく、遠くなる。

結論から言うと、これはMIXの失敗ではありません。長尺(フル尺)用に作った音源を、そのままショートに使っていることが原因です。この2つは、聴かれる環境がまったく違います。

この記事では、累計3,000曲のデータを受け取ってきた側から、次の3つを整理します。

この記事の前提について。各プラットフォームの音量基準や仕様は公表されていないものが多く、また予告なく変わります。ここに書いている数値は、公開情報と、実際に投稿して測った範囲での一般的な目安です。断定できない箇所は「推測」と明記しています。最終的にはご自身の環境で聴き比べて判断してください。
この記事の流れ
  1. 結論(3行)
  2. ショートで音が変わる、2つの理由
  3. スマホのスピーカーは、低音をほとんど鳴らせない
  4. ラウドネス正規化──音圧を上げても意味がない仕組み
  5. プラットフォーム別 音の仕様くらべ
  6. 尺の設計──何秒にして、どこから切るか
  7. 長尺用マスターをそのまま使うと起きる3つのこと
  8. ショート用に変える5つのポイント
  9. モノラル確認──1分でできて、いちばん効く
  10. 書き出し設定の正解
  11. MIX師に頼むときの伝え方(コピペ用)
  12. やってはいけない3つのこと
  13. 投稿前チェックリスト(10項目)
  14. よくある質問
  15. まとめ

1. 結論(3行)

ショートで音が負けるのは、音圧が足りないからではなく、スマホで鳴る帯域が足りないからです。スマートフォンの内蔵スピーカーは低音をほとんど再生できません。低音の量感で厚みを作っている音源は、その厚みごと消えます。

そして、音圧を上げても取り返せません。主要プラットフォームには音量を自動でそろえる仕組みがあり、大きく作った音源はアップロード後に下げられます。上げれば上げるほど、下げられたときに平坦な音だけが残ります。

やるべきことは、中音域を厚くして、リバーブを減らし、モノラルで確認して、15〜30秒で切り出すことです。この記事の残りは、その具体的な手順です。

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2. ショートで音が変わる、2つの理由

「なんかしょぼい」の正体は、実はかなりはっきりしています。次の2つです。

理由何が起きているか結果としてどう聞こえるか
再生機の違いイヤホン → スマホ内蔵スピーカーに変わる。低音が物理的に鳴らない厚みがなくなる。声だけが薄く浮く
音量の自動調整プラットフォーム側が、基準より大きい音源を自動的に下げる周りの動画と同じ音量になり、相対的に「地味」に感じる

この2つは、どちらも投稿者側では止められません。止められないなら、その前提に合わせて作る。それだけの話です。

順番に見ていきます。

3. スマホのスピーカーは、低音をほとんど鳴らせない

まず、ここがいちばん大きいです。

スピーカーが低い音を出すためには、空気をたくさん動かす必要があります。空気をたくさん動かすには、振動板が大きくなければなりません。スマートフォンの内蔵スピーカーは、直径にして1cm前後です。物理的に、低い音を作れません。

目安として、スマホの内蔵スピーカーが実用的に鳴らせるのは、だいたい500Hzより上です(機種差が大きいため、あくまで目安です)。それより下の音は、ほとんど聞こえないか、かすかに気配が残る程度になります。

これが歌ってみたに何をもたらすか

歌ってみたのオケは、キック(バスドラム)とベースが、だいたい50Hz〜200Hzのあたりで曲の土台を作っています。この帯域が丸ごと聞こえないということは──

ここで多くの人が、「音量が足りないんだ」と考えて音圧を上げにいきます。これが遠回りになります。足りないのは音量ではなく、スマホで鳴る帯域の中身だからです。

では、どの帯域が「鳴る」のか

帯域スマホ内蔵スピーカーでの鳴り方歌ってみたでの役割
〜100Hzほぼ鳴らないキックとベースの土台。ショートでは捨てる前提でよい
100〜300Hzかなり弱い声の「太さ」。ここに頼ると痩せて聞こえる
300〜800Hz鳴り始める声の芯。ここが薄いと存在感が出ない
1k〜4kHzいちばんよく鳴る言葉のはっきりさ、抜け。ショートの主戦場
4k〜8kHzよく鳴る息づかい、明るさ。出しすぎると耳が痛い
8kHz〜鳴るが、圧縮で削られやすい空気感。ショートでは優先度が低い

つまり、ショートで戦う帯域は 1kHz〜4kHz です。ここは同時に、人の耳がもっとも敏感な帯域でもあります。歌詞が聞き取れるかどうかも、ここで決まります。

声がこもって聞こえる原因については、声が埋もれる・こもる原因と直し方で帯域ごとに詳しく整理しています。あわせて読むと理解が早いはずです。

4. ラウドネス正規化──音圧を上げても意味がない仕組み

2つめの理由です。こちらは、知らないと永遠に迷子になります。

ラウドネス正規化とは何か

ラウドネス正規化とは、投稿された動画や音楽の音量を、プラットフォーム側が一定の基準にそろえる仕組みのことです。

身近な例で言うと、テレビでCMになった瞬間に音が大きくなる、あれを防ぐための仕組みだと考えてください。次々に流れてくる動画の音量がバラバラだと、視聴者が毎回ボリュームを触ることになります。それを避けるために、プラットフォーム側が自動でそろえています。

単位には LUFS(ラウドネス・ユニット・フル・スケール)が使われます。これは「人間の耳が感じる音の大きさ」を数値化したもので、YouTubeなどはおおむね -14 LUFS 前後を基準にしていると広く知られています。

ここは正確に書きます。YouTube が −14 LUFS 前後を基準にしていることは、多くの実測と公開情報から一貫して確認されています。一方、TikTok と Instagram は公式に基準値を公表していません。実測レポートでは −14 LUFS 前後という報告が多いものの、これは推測を含みます。数値を鵜呑みにせず、「大きく作っても下げられる」という原則だけを押さえてください。

何が起きるか

あなたが −8 LUFS という、かなり大きな音圧で書き出したとします。プラットフォームの基準が −14 LUFS だとすると、アップロード後、6dB ぶん自動的に下げられます。

ここで問題になるのは、音圧を上げる過程で失ったものは戻ってこないことです。

作り方アップ前正規化後の音量聞こえ方
音圧を詰めた−8 LUFS・強弱がつぶれている−14 LUFS平坦。うるさいのに迫力がない
強弱を残した−12 LUFS・サビで音が立つ−14 LUFSサビで前に出る。大きく感じる

正規化後の音量は同じです。それでも、強弱が残っているほうが「大きく」聞こえます。人間の耳は、絶対的な音量ではなく、直前との差で大きさを判断するからです。

これは直感に反する話なので、もう一度だけ言い換えます。音圧競争は、正規化のある場所では最初から負け戦です。勝負すべきは、抜けの良さと、強弱の設計です。

ラウドネスの考え方そのものについては、配信で埋もれない音圧の話(-14 LUFS)で、長尺・配信サービス側の視点から詳しく書いています。

5. プラットフォーム別 音の仕様くらべ

2026年9月時点で、投稿者側が把握しておくとよい範囲をまとめます。仕様は変わりますので、目安としてお使いください。

項目TikTokYouTube ショートInstagram リール
最大の尺長尺化が進行中(10分以上も可)3分まで3分まで
実務的な推奨尺15〜30秒15〜30秒15〜30秒
音量の自動調整あり(基準は非公表)あり(YouTube本体と同様)あり(基準は非公表)
主な再生環境スマホ内蔵スピーカースマホ内蔵スピーカースマホ内蔵スピーカー
音声コーデックAAC に再圧縮されるAAC / Opus に再圧縮AAC に再圧縮
推奨解像度1080×1920(9:16)1080×1920(9:16)1080×1920(9:16)
音まわりの注意楽曲の権利判定が厳しめ本編(長尺)への導線を作りやすい音が最も痩せやすい印象

3つとも、音の作り方の方針はほとんど同じです。1本作れば3つに流用できます。プラットフォームごとに音を作り分ける必要はありません。

権利について、ひとつだけ。ショート動画は自動判定の対象になりやすく、原盤(CD音源など)を使うと、収益化の制限やミュートが起きることがあります。歌ってみたであれば、公式に配布されているオフボーカル音源か、自分で用意した伴奏を使うのが安全です。詳しくは ボカロのカバーは著作権的にOK?投稿してよい範囲歌ってみたは収益化できる?条件と仕組み にまとめています。

6. 尺の設計──何秒にして、どこから切るか

音の作り方の前に、ここを決めます。尺の設計は、音圧よりも再生数への影響が大きいです。

何秒にするか

向いている使い方注意点
7〜10秒フックだけを見せる。ループさせる歌の良さは伝わりにくい
15〜20秒サビ1回。最も扱いやすいこれが基本。迷ったらここ
25〜30秒サビ+落ちサビ、または転調まで見せる最後まで見られる割合が下がり始める
60秒以上フル尺に近い見せ方。ファンがいる前提フォロワーが少ないうちは伸びにくい

迷ったら15〜20秒です。サビ1回ぶんがだいたいこの長さに収まる曲が多く、しかも最後まで再生されやすい。この2つが同時に満たせるのは、この尺だけです。

どこから切るか

ここに、細かいけれど効く工夫があります。

サビの頭の音から始めるのではなく、その半拍〜1拍前から始めてください。

理由は、耳の準備です。無音から急にサビの音が立ち上がると、聴いている側の耳が音量に慣れる前に、いちばん良いところが過ぎてしまいます。半拍ぶん前を残しておくと、耳が構えた状態でサビを迎えられます。

【悪い例】 [無音] → サビ頭「♪ ─────」 ↑ ここで耳が驚いて、1音めが飛ぶ 【良い例】 [半拍前のオケ] → サビ頭「♪ ─────」 ↑ 0.3秒あるだけで、1音めが届く

逆に、やめたほうがよいのが「Aメロから入れてタメを作る」構成です。フル尺なら効果的ですが、ショートでは最初の3秒で判断されるため、盛り上がる前に離脱されます。フォロワーがまだ少ない段階では、いきなりサビが正解です。

終わり方

ショートは自動でループします。つまり、終わりが次の始まりにつながります。

7. 長尺用マスターをそのまま使うと起きる3つのこと

ここまでの話を踏まえると、フル尺用の音源をそのまま切り出すと何が起きるかが見えてきます。

① 低音の量感が、そのまま「損」になる

フル尺のマスターは、イヤホンやスピーカーで最後まで聴かれる前提で、低域に厚みを持たせて作ります。この低域は、スマホでは鳴りません。鳴らないのに、音量の計算には入っています。

結果、正規化で下げられる量だけが増えて、聞こえる帯域はむしろ小さくなります。低音を持っているぶん損をする、という奇妙なことが起きます。

② リバーブが、こもりに変わる

フル尺で「気持ちいい奥行き」だったリバーブは、スマホの小さいスピーカーではただのぼやけになります。低音が消え、中音域だけが残った状態で残響が乗ると、言葉が濁ります。

目安として、ショート用ではリバーブを長尺の6〜7割まで減らすと、素直に届くようになります。

③ ステレオの広がりが、消える

これはあとで詳しく書きますが、スマホは実質モノラル再生になることが多く、その際に左右の音は足し算されます。左右で逆向きに動いている成分は、足すと消えます。ステレオ拡張を強くかけたコーラスやダブリングが、スマホでだけ消えるのはこのためです。

ダブリングの仕組みについては ダブリングで声に厚みを出す方法 に書いていますが、ショートでは広げすぎが裏目に出ると覚えておいてください。

8. ショート用に変える5つのポイント

ではどう変えるか。優先度の高い順に並べます。

順位やること効果難易度
1リバーブを6〜7割に減らす大。言葉がはっきりする易しい
2ボーカルを1〜2dB上げる大。存在感が戻る易しい
3100Hz以下を軽く削る中。正規化の損が減る普通
4ステレオ拡張を弱める中。モノラルで消えなくなる普通
5音圧を欲張らない(−12前後で止める)中。強弱が残る易しい

1. リバーブを減らす

いちばん効きます。そして、いちばん簡単です。

フル尺で心地よく感じたリバーブ量を、そのまま6〜7割にします。数値で言えば、リバーブの返し(センド量)を −3dB ほど下げるだけです。それだけで、スマホでの聞き取りやすさが目に見えて変わります。

2. ボーカルを1〜2dB上げる

低音が消えるぶん、相対的にボーカルの存在感も落ちます。フル尺のバランスから、ボーカルだけを1〜2dB上げると、ちょうど元の印象に戻ります。

上げすぎると、今度はオケから浮いてカラオケのように聞こえます。2dBまでにしておいてください。オケと声の比率の考え方は 歌ってみたの音量バランス に詳しく書いています。

3. 100Hz以下を軽く削る

鳴らない帯域を持っていると、正規化で下げられる量だけが増えます。マスターに軽くハイパスをかけて、100Hz以下を少し落とすと、同じ正規化後の音量でも、聞こえる帯域が大きくなります。

ただし、削りすぎるとイヤホンで聴いたときに痩せます。ショートもイヤホンで聴く人はいます。「バッサリ切る」ではなく「少し落とす」程度にしてください。

4. ステレオ拡張を弱める

ステレオイメージャーやワイド系のエフェクトを使っている場合、ショート用では効果を半分程度にします。次の章のモノラル確認で、消えるパートがないかを必ず見てください。

5. 音圧を欲張らない

−12 LUFS 前後で止めておくと、強弱が残ったまま基準に近づきます。ここから無理に −8 まで詰めても、下げられるだけです。

マスタリングの考え方全般は 歌ってみたにマスタリングは必要?MIXとの違い にまとめています。

9. モノラル確認──1分でできて、いちばん効く

ここは、機材も知識もいりません。1分で終わって、失敗の8割を防げます。

やり方

  1. 完成した音源を、スマホのスピーカーで、そのまま再生する(イヤホンを外す)
  2. 机の上に置いて、1メートルくらい離れて聴く
  3. 次の3つを確認する
確認すること問題があるときの症状対処
歌詞が聞き取れるか言葉が濁る、母音だけ聞こえるリバーブを減らす
ボーカルが埋もれていないかオケに飲まれる、遠いボーカルを1〜2dB上げる
消えているパートがないかコーラスやハモリだけ聞こえないステレオ拡張を弱める

3つめが特に重要です。ハモリやコーラスがスマホで消えるのは、かなり頻繁に起きます。そして、イヤホンで確認しているかぎり、絶対に気づけません。

なぜ消えるのか(仕組み)。ステレオ拡張の多くは、片方のチャンネルの位相を反転させて広がりを作っています。左右を足してモノラルにすると、逆向きの波どうしが打ち消し合い、その音が消えます。これを「位相の打ち消し」と呼びます。広げれば広げるほど、モノラルで消えやすくなる、という関係です。

この確認は、MIXセルフチェックツールでも項目に入れています。書き出す前に一度だけ、スマホのスピーカーで鳴らしてください。

10. 書き出し設定の正解

ここは迷いどころが多いので、表にします。

項目設定理由
音声の素材WAV / 48kHz / 24bit動画は48kHzが標準。圧縮しない状態で持っておく
動画の音声AAC / 320kbps / 48kHz / ステレオアップ後に再圧縮されるので、元は高品質にしておく
解像度1080×1920(9:16)3プラットフォーム共通
フレームレート30fps または 60fps元素材に合わせる。混在させない
ラウドネス−12 〜 −14 LUFS(統合値)正規化で大きく下げられない範囲
トゥルーピーク−1.0 dBTP 以下再圧縮時の歪みを防ぐ

いちばん多い失敗:三重圧縮

これは本当によく見ます。

【やってしまいがちな流れ】 MIX音源を MP3 で受け取る(1回目の圧縮) ↓ 動画編集ソフトに入れて書き出す(2回目の圧縮) ↓ アップロードして再エンコードされる(3回目の圧縮) ↓ 元に戻せない劣化が3回ぶん積み上がる 【正しい流れ】 MIX音源を WAV で受け取る(圧縮なし) ↓ 動画編集ソフトに入れて AAC 320kbps で書き出す(1回目) ↓ アップロードして再エンコード(2回目)

圧縮は、重ねるたびに戻せません。MIXを依頼するときは、必ずWAVで受け取ってください。ファイル形式まわりの整理は MIX依頼のファイル命名規則YouTubeに上げると音質が悪くなる?書き出し設定の正解 にまとめています。

11. MIX師に頼むときの伝え方(コピペ用)

ここまでの内容は、自分でやろうとすると、それなりに手間です。MIXを依頼しているなら、依頼時に一言添えるだけで済みます。

そのまま使える文面を置いておきます。

【ショート用書き出しの依頼文】 いつもありがとうございます。 今回、TikTok・YouTubeショート用の書き出しも あわせてお願いできますでしょうか。 ・切り出し位置:2:14 のサビ頭(半拍前から) ・尺:20秒 ・用途:スマホの内蔵スピーカーで再生される前提 スマホで聴いたときに言葉が埋もれないよう、 リバーブ少なめ・ボーカルやや前で 調整していただけると助かります。 ファイル形式は WAV / 48kHz / 24bit でお願いします。 (長尺用のマスターとは別ファイルでいただけますと幸いです)

この5行が伝わっていれば、たいていのMIX師は対応できます。逆に、何も言わずに長尺用だけを受け取ると、ショートで損をします。

依頼文そのものの書き方は MIX依頼の例文テンプレート にまとめてあります。初回の依頼で何を伝えるべきかは、そちらが最短です。

YOUMIXでは、長尺用マスターとショート用マスターの2種類を標準でお出しできます。
切り出し位置と尺をお伝えいただければ、そのまま使える状態でお渡しします。
1曲7,000円から、修正込み。見積もりは無料です。
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12. やってはいけない3つのこと

① 納品されたMIXを、自分で音量だけ上げる

いちばん多い失敗です。「ショートだと小さいから」と、動画編集ソフトで音量を持ち上げる。

これは、ほぼ確実に音を壊します。納品時点でピークは調整されているため、そこから上げると波形の頭が潰れます(クリップ)。しかも、上げたぶんは正規化で下げられるので、歪みだけが残ります。

音量が足りないと感じたら、上げるのではなく、MIX側に相談してください。音割れの仕組みは 歌ってみたの録音が音割れする原因と直し方 に書いています。

② イヤホンだけで確認して投稿する

イヤホンは低音まできれいに鳴らします。つまり、ショートでいちばん問題になる部分が、イヤホンでは見えません。

確認用の機材を買う必要はありません。手元のスマホを机に置いて、スピーカーで鳴らすだけです。1分で済みます。モニター環境の考え方は ヘッドホン・イヤホンの選び方 にまとめています。

③ 音圧を上げる競争に参加する

繰り返しになりますが、正規化のある場所では音圧競争は成立しません。上げるほど、下げられたときに平坦になります。

他人の動画が大きく聞こえるとしたら、それは音圧ではなく、中音域の作り方が上手いか、単に低音が少ない(=スマホで損をしていない)かのどちらかです。

13. 投稿前チェックリスト(10項目)

そのまま上から確認してください。

#確認項目OKの基準
1スマホのスピーカーで再生したイヤホンを外して確認済み
2歌詞が聞き取れる1メートル離れて聞き取れる
3消えているパートがないハモリ・コーラスが残っている
4尺が15〜30秒に収まっているサビ1回ぶんで完結
5サビの半拍前から始まっている1音めが欠けていない
6終わりが拍の頭で切れているループしても違和感がない
7音声素材がWAVであるMP3を経由していない
8トゥルーピークが−1.0dB以下書き出し時に確認済み
9音量を自分で上げていない納品時のまま使っている
10使用した伴奏の権利を確認した公式配布または自作

10項目のうち、1と3が突出して重要です。ここだけでも必ずやってください。

14. よくある質問

Q. TikTokに上げると音が小さくなるのはなぜですか?

多くの動画プラットフォームには、投稿された音声の音量を一定の基準にそろえる仕組み(ラウドネス正規化)があります。基準より大きい音源はアップロード後に自動的に下げられるため、書き出し時にどれだけ音圧を上げても、再生時の音量はほぼ横並びになります。

つまり「音が小さい」と感じる原因は、音量そのものではなく、他の動画と比べたときの聞こえ方の差です。低音に偏った音源はスマホのスピーカーで再生できる成分が少ないため、同じ音量でも小さく、痩せて聞こえます。対策は音圧を上げることではなく、スマホで鳴る帯域、つまり中音域の密度を上げることです。

Q. ショート用に、MIXは別で作り直す必要がありますか?

作り直しまでは不要なことが多いですが、書き出し(マスター)は分けたほうが結果は良くなります。

長尺用のマスターは、イヤホンやスピーカーで最後まで聴かれる前提で、低音の量感と広がり、そしてダイナミクスを残して作ります。一方ショートは、スマホの内蔵スピーカー・モノラル・数十秒・音量小さめという条件で聴かれます。同じ素材でも、低域の処理と中音域の押し出し、リバーブの量を変えたほうが素直に届きます。

MIXを依頼する際に「ショート用の書き出しもお願いします」と一言添えるだけで対応してもらえることが多いので、依頼時に伝えるのが最も確実です。

Q. ショート動画の音声は何秒くらいがよいですか?

歌ってみたの切り出しでは、15秒から30秒がもっとも扱いやすい長さです。理由は2つあります。ひとつは、最後まで再生される割合(視聴維持率)が長さに反比例して下がること。もうひとつは、サビ1回分がだいたい20秒前後に収まる曲が多いことです。

60秒使えるプラットフォームでも、まず30秒以内で1つの山を作り切るほうが、繰り返し再生されやすくなります。前奏や間奏を入れて尺を稼ぐのは、ショートでは逆効果になりやすいです。

Q. サビのどこから切り出すのが正解ですか?

サビの頭から始めるのが基本ですが、実務上は「サビ直前の半拍から」始めるとつながりが自然になります。いきなりサビ頭の音から鳴らすと、無音から急に音が立ち上がるため、耳が構える前に一番良いところが過ぎてしまいます。半拍から1拍ぶんだけ前を残し、そこから入ると、聴いている側の耳が音量に慣れた状態でサビを迎えられます。

逆に、Aメロから入れて「タメ」を作る構成は、最初の3秒で離脱されやすいため、フォロワーがまだ少ない段階ではおすすめしません。

Q. 書き出しの音声設定は何にすればよいですか?

動画に組み込む前の音声は、48kHz・24bitのWAVで扱うのが安全です。最終的な動画ファイルは、音声をAAC・320kbps前後・48kHzで書き出しておけば、アップロード後の再圧縮でも大きく劣化しません。

よくある失敗は、MP3を素材として使い、動画書き出しで再度圧縮し、アップロード時にさらに圧縮される、という三重圧縮です。圧縮は重ねるたびに戻せない劣化が積み上がるので、素材は必ず非圧縮(WAV)で持っておいてください。

Q. 音量を上げるプラグイン(マキシマイザー)で音圧を稼げばいいのでは?

再生側で自動的に下げられるため、稼いだ音圧はほぼ効果を持ちません。むしろ、音圧を上げるほど音の強弱がつぶれ、下げられたあとに「平坦で聞き疲れする音」だけが残ります。

同じ音量まで下げられたとき、強弱が残っている音源のほうが、はっきりと大きく感じられます。これは直感に反しますが、ラウドネス正規化がある環境では一貫して起きる現象です。音圧競争ではなく、抜けの良さで勝負するほうが結果が出ます。

Q. ステレオで広がりを出したのに、スマホだと消えてしまいます。

スマートフォンの内蔵スピーカーは1つ、もしくは実質モノラルで再生されることが多く、その際に左右の音は足し算されます。左右で位相が反転している成分(いわゆる「サイド」成分)は、足し算されると打ち消し合って消えます。

ステレオ拡張の効果を強くかけたコーラスやダブリングが、スマホでだけ消えるのはこのためです。書き出し前に必ずモノラルで再生して確認し、消えるパートがあれば拡張を弱めてください。この確認は、ショート動画では長尺以上に重要です。

Q. ショート動画から本編(フル尺)へ、どうやって誘導すればいいですか?

ショートの中で「フルはこちら」と文字を出すより、切り出した部分が単体で完結して満足度が高いほうが、結果的にプロフィールから本編へ流れます。数字の上でも、最後まで見られた割合が高い動画のほうが表示回数が伸びるため、まず「その30秒だけで良いと感じてもらう」ことを優先してください。

そのうえで、概要欄と固定コメントにフル尺のリンクを置く、プロフィールのリンクを本編に向けておく、という導線を用意しておくのが実務的です。概要欄の書き方は 歌ってみたの概要欄の書き方 に、伸ばし方全般は 歌ってみた投稿を伸ばすコツ にまとめています。

15. まとめ

長くなったので、要点だけもう一度並べます。

覚えること理由
低音は鳴らない前提で作るスマホのスピーカーは物理的に低音を出せない
音圧は上げても下げられるラウドネス正規化があるため、上げ得はない
戦うのは1k〜4kHzスマホで最もよく鳴り、言葉のはっきりさを決める帯域
リバーブは6〜7割に小さいスピーカーでは、残響がこもりに変わる
モノラルで必ず確認ハモリが消えるのは、イヤホンでは気づけない
15〜20秒・サビの半拍前から最後まで見られやすく、1音めが欠けない
WAVで受け取る圧縮は重ねるほど戻せない

ショート動画は、いま歌ってみたを始めた人が最初に人に届く場所になっています。フル尺を作り込んでも、最初に触れてもらえなければ聴かれません。

そして、ショートで必要なのは高い機材ではありません。スマホのスピーカーで一度鳴らしてみること。これだけで、大半の問題は防げます。

その一手間を、良い形で仕上げたいときは、遠慮なくご相談ください。

ショート用の切り出しとマスターも、まとめて承ります。
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「この曲のここを20秒で」というご相談だけでも大丈夫です。
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