「YouTubeだといい感じなのに、TikTokに上げた瞬間しょぼくなるんです」
ここ1年、この相談がはっきり増えました。同じ音源です。同じMIXです。それなのに、ショート動画にした途端、音が小さく、平たく、遠くなる。
結論から言うと、これはMIXの失敗ではありません。長尺(フル尺)用に作った音源を、そのままショートに使っていることが原因です。この2つは、聴かれる環境がまったく違います。
この記事では、累計3,000曲のデータを受け取ってきた側から、次の3つを整理します。
ショートで音が負けるのは、音圧が足りないからではなく、スマホで鳴る帯域が足りないからです。スマートフォンの内蔵スピーカーは低音をほとんど再生できません。低音の量感で厚みを作っている音源は、その厚みごと消えます。
そして、音圧を上げても取り返せません。主要プラットフォームには音量を自動でそろえる仕組みがあり、大きく作った音源はアップロード後に下げられます。上げれば上げるほど、下げられたときに平坦な音だけが残ります。
やるべきことは、中音域を厚くして、リバーブを減らし、モノラルで確認して、15〜30秒で切り出すことです。この記事の残りは、その具体的な手順です。
「なんかしょぼい」の正体は、実はかなりはっきりしています。次の2つです。
| 理由 | 何が起きているか | 結果としてどう聞こえるか |
|---|---|---|
| 再生機の違い | イヤホン → スマホ内蔵スピーカーに変わる。低音が物理的に鳴らない | 厚みがなくなる。声だけが薄く浮く |
| 音量の自動調整 | プラットフォーム側が、基準より大きい音源を自動的に下げる | 周りの動画と同じ音量になり、相対的に「地味」に感じる |
この2つは、どちらも投稿者側では止められません。止められないなら、その前提に合わせて作る。それだけの話です。
順番に見ていきます。
まず、ここがいちばん大きいです。
スピーカーが低い音を出すためには、空気をたくさん動かす必要があります。空気をたくさん動かすには、振動板が大きくなければなりません。スマートフォンの内蔵スピーカーは、直径にして1cm前後です。物理的に、低い音を作れません。
目安として、スマホの内蔵スピーカーが実用的に鳴らせるのは、だいたい500Hzより上です(機種差が大きいため、あくまで目安です)。それより下の音は、ほとんど聞こえないか、かすかに気配が残る程度になります。
歌ってみたのオケは、キック(バスドラム)とベースが、だいたい50Hz〜200Hzのあたりで曲の土台を作っています。この帯域が丸ごと聞こえないということは──
ここで多くの人が、「音量が足りないんだ」と考えて音圧を上げにいきます。これが遠回りになります。足りないのは音量ではなく、スマホで鳴る帯域の中身だからです。
| 帯域 | スマホ内蔵スピーカーでの鳴り方 | 歌ってみたでの役割 |
|---|---|---|
| 〜100Hz | ほぼ鳴らない | キックとベースの土台。ショートでは捨てる前提でよい |
| 100〜300Hz | かなり弱い | 声の「太さ」。ここに頼ると痩せて聞こえる |
| 300〜800Hz | 鳴り始める | 声の芯。ここが薄いと存在感が出ない |
| 1k〜4kHz | いちばんよく鳴る | 言葉のはっきりさ、抜け。ショートの主戦場 |
| 4k〜8kHz | よく鳴る | 息づかい、明るさ。出しすぎると耳が痛い |
| 8kHz〜 | 鳴るが、圧縮で削られやすい | 空気感。ショートでは優先度が低い |
つまり、ショートで戦う帯域は 1kHz〜4kHz です。ここは同時に、人の耳がもっとも敏感な帯域でもあります。歌詞が聞き取れるかどうかも、ここで決まります。
声がこもって聞こえる原因については、声が埋もれる・こもる原因と直し方で帯域ごとに詳しく整理しています。あわせて読むと理解が早いはずです。
2つめの理由です。こちらは、知らないと永遠に迷子になります。
ラウドネス正規化とは、投稿された動画や音楽の音量を、プラットフォーム側が一定の基準にそろえる仕組みのことです。
身近な例で言うと、テレビでCMになった瞬間に音が大きくなる、あれを防ぐための仕組みだと考えてください。次々に流れてくる動画の音量がバラバラだと、視聴者が毎回ボリュームを触ることになります。それを避けるために、プラットフォーム側が自動でそろえています。
単位には LUFS(ラウドネス・ユニット・フル・スケール)が使われます。これは「人間の耳が感じる音の大きさ」を数値化したもので、YouTubeなどはおおむね -14 LUFS 前後を基準にしていると広く知られています。
あなたが −8 LUFS という、かなり大きな音圧で書き出したとします。プラットフォームの基準が −14 LUFS だとすると、アップロード後、6dB ぶん自動的に下げられます。
ここで問題になるのは、音圧を上げる過程で失ったものは戻ってこないことです。
| 作り方 | アップ前 | 正規化後の音量 | 聞こえ方 |
|---|---|---|---|
| 音圧を詰めた | −8 LUFS・強弱がつぶれている | −14 LUFS | 平坦。うるさいのに迫力がない |
| 強弱を残した | −12 LUFS・サビで音が立つ | −14 LUFS | サビで前に出る。大きく感じる |
正規化後の音量は同じです。それでも、強弱が残っているほうが「大きく」聞こえます。人間の耳は、絶対的な音量ではなく、直前との差で大きさを判断するからです。
これは直感に反する話なので、もう一度だけ言い換えます。音圧競争は、正規化のある場所では最初から負け戦です。勝負すべきは、抜けの良さと、強弱の設計です。
ラウドネスの考え方そのものについては、配信で埋もれない音圧の話(-14 LUFS)で、長尺・配信サービス側の視点から詳しく書いています。
2026年9月時点で、投稿者側が把握しておくとよい範囲をまとめます。仕様は変わりますので、目安としてお使いください。
| 項目 | TikTok | YouTube ショート | Instagram リール |
|---|---|---|---|
| 最大の尺 | 長尺化が進行中(10分以上も可) | 3分まで | 3分まで |
| 実務的な推奨尺 | 15〜30秒 | 15〜30秒 | 15〜30秒 |
| 音量の自動調整 | あり(基準は非公表) | あり(YouTube本体と同様) | あり(基準は非公表) |
| 主な再生環境 | スマホ内蔵スピーカー | スマホ内蔵スピーカー | スマホ内蔵スピーカー |
| 音声コーデック | AAC に再圧縮される | AAC / Opus に再圧縮 | AAC に再圧縮 |
| 推奨解像度 | 1080×1920(9:16) | 1080×1920(9:16) | 1080×1920(9:16) |
| 音まわりの注意 | 楽曲の権利判定が厳しめ | 本編(長尺)への導線を作りやすい | 音が最も痩せやすい印象 |
3つとも、音の作り方の方針はほとんど同じです。1本作れば3つに流用できます。プラットフォームごとに音を作り分ける必要はありません。
音の作り方の前に、ここを決めます。尺の設計は、音圧よりも再生数への影響が大きいです。
| 尺 | 向いている使い方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 7〜10秒 | フックだけを見せる。ループさせる | 歌の良さは伝わりにくい |
| 15〜20秒 | サビ1回。最も扱いやすい | これが基本。迷ったらここ |
| 25〜30秒 | サビ+落ちサビ、または転調まで見せる | 最後まで見られる割合が下がり始める |
| 60秒以上 | フル尺に近い見せ方。ファンがいる前提 | フォロワーが少ないうちは伸びにくい |
迷ったら15〜20秒です。サビ1回ぶんがだいたいこの長さに収まる曲が多く、しかも最後まで再生されやすい。この2つが同時に満たせるのは、この尺だけです。
ここに、細かいけれど効く工夫があります。
サビの頭の音から始めるのではなく、その半拍〜1拍前から始めてください。
理由は、耳の準備です。無音から急にサビの音が立ち上がると、聴いている側の耳が音量に慣れる前に、いちばん良いところが過ぎてしまいます。半拍ぶん前を残しておくと、耳が構えた状態でサビを迎えられます。
逆に、やめたほうがよいのが「Aメロから入れてタメを作る」構成です。フル尺なら効果的ですが、ショートでは最初の3秒で判断されるため、盛り上がる前に離脱されます。フォロワーがまだ少ない段階では、いきなりサビが正解です。
ショートは自動でループします。つまり、終わりが次の始まりにつながります。
ここまでの話を踏まえると、フル尺用の音源をそのまま切り出すと何が起きるかが見えてきます。
フル尺のマスターは、イヤホンやスピーカーで最後まで聴かれる前提で、低域に厚みを持たせて作ります。この低域は、スマホでは鳴りません。鳴らないのに、音量の計算には入っています。
結果、正規化で下げられる量だけが増えて、聞こえる帯域はむしろ小さくなります。低音を持っているぶん損をする、という奇妙なことが起きます。
フル尺で「気持ちいい奥行き」だったリバーブは、スマホの小さいスピーカーではただのぼやけになります。低音が消え、中音域だけが残った状態で残響が乗ると、言葉が濁ります。
目安として、ショート用ではリバーブを長尺の6〜7割まで減らすと、素直に届くようになります。
これはあとで詳しく書きますが、スマホは実質モノラル再生になることが多く、その際に左右の音は足し算されます。左右で逆向きに動いている成分は、足すと消えます。ステレオ拡張を強くかけたコーラスやダブリングが、スマホでだけ消えるのはこのためです。
ダブリングの仕組みについては ダブリングで声に厚みを出す方法 に書いていますが、ショートでは広げすぎが裏目に出ると覚えておいてください。
ではどう変えるか。優先度の高い順に並べます。
| 順位 | やること | 効果 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 1 | リバーブを6〜7割に減らす | 大。言葉がはっきりする | 易しい |
| 2 | ボーカルを1〜2dB上げる | 大。存在感が戻る | 易しい |
| 3 | 100Hz以下を軽く削る | 中。正規化の損が減る | 普通 |
| 4 | ステレオ拡張を弱める | 中。モノラルで消えなくなる | 普通 |
| 5 | 音圧を欲張らない(−12前後で止める) | 中。強弱が残る | 易しい |
いちばん効きます。そして、いちばん簡単です。
フル尺で心地よく感じたリバーブ量を、そのまま6〜7割にします。数値で言えば、リバーブの返し(センド量)を −3dB ほど下げるだけです。それだけで、スマホでの聞き取りやすさが目に見えて変わります。
低音が消えるぶん、相対的にボーカルの存在感も落ちます。フル尺のバランスから、ボーカルだけを1〜2dB上げると、ちょうど元の印象に戻ります。
上げすぎると、今度はオケから浮いてカラオケのように聞こえます。2dBまでにしておいてください。オケと声の比率の考え方は 歌ってみたの音量バランス に詳しく書いています。
鳴らない帯域を持っていると、正規化で下げられる量だけが増えます。マスターに軽くハイパスをかけて、100Hz以下を少し落とすと、同じ正規化後の音量でも、聞こえる帯域が大きくなります。
ただし、削りすぎるとイヤホンで聴いたときに痩せます。ショートもイヤホンで聴く人はいます。「バッサリ切る」ではなく「少し落とす」程度にしてください。
ステレオイメージャーやワイド系のエフェクトを使っている場合、ショート用では効果を半分程度にします。次の章のモノラル確認で、消えるパートがないかを必ず見てください。
−12 LUFS 前後で止めておくと、強弱が残ったまま基準に近づきます。ここから無理に −8 まで詰めても、下げられるだけです。
マスタリングの考え方全般は 歌ってみたにマスタリングは必要?MIXとの違い にまとめています。
ここは、機材も知識もいりません。1分で終わって、失敗の8割を防げます。
| 確認すること | 問題があるときの症状 | 対処 |
|---|---|---|
| 歌詞が聞き取れるか | 言葉が濁る、母音だけ聞こえる | リバーブを減らす |
| ボーカルが埋もれていないか | オケに飲まれる、遠い | ボーカルを1〜2dB上げる |
| 消えているパートがないか | コーラスやハモリだけ聞こえない | ステレオ拡張を弱める |
3つめが特に重要です。ハモリやコーラスがスマホで消えるのは、かなり頻繁に起きます。そして、イヤホンで確認しているかぎり、絶対に気づけません。
この確認は、MIXセルフチェックツールでも項目に入れています。書き出す前に一度だけ、スマホのスピーカーで鳴らしてください。
ここは迷いどころが多いので、表にします。
| 項目 | 設定 | 理由 |
|---|---|---|
| 音声の素材 | WAV / 48kHz / 24bit | 動画は48kHzが標準。圧縮しない状態で持っておく |
| 動画の音声 | AAC / 320kbps / 48kHz / ステレオ | アップ後に再圧縮されるので、元は高品質にしておく |
| 解像度 | 1080×1920(9:16) | 3プラットフォーム共通 |
| フレームレート | 30fps または 60fps | 元素材に合わせる。混在させない |
| ラウドネス | −12 〜 −14 LUFS(統合値) | 正規化で大きく下げられない範囲 |
| トゥルーピーク | −1.0 dBTP 以下 | 再圧縮時の歪みを防ぐ |
これは本当によく見ます。
圧縮は、重ねるたびに戻せません。MIXを依頼するときは、必ずWAVで受け取ってください。ファイル形式まわりの整理は MIX依頼のファイル命名規則 と YouTubeに上げると音質が悪くなる?書き出し設定の正解 にまとめています。
ここまでの内容は、自分でやろうとすると、それなりに手間です。MIXを依頼しているなら、依頼時に一言添えるだけで済みます。
そのまま使える文面を置いておきます。
この5行が伝わっていれば、たいていのMIX師は対応できます。逆に、何も言わずに長尺用だけを受け取ると、ショートで損をします。
依頼文そのものの書き方は MIX依頼の例文テンプレート にまとめてあります。初回の依頼で何を伝えるべきかは、そちらが最短です。
いちばん多い失敗です。「ショートだと小さいから」と、動画編集ソフトで音量を持ち上げる。
これは、ほぼ確実に音を壊します。納品時点でピークは調整されているため、そこから上げると波形の頭が潰れます(クリップ)。しかも、上げたぶんは正規化で下げられるので、歪みだけが残ります。
音量が足りないと感じたら、上げるのではなく、MIX側に相談してください。音割れの仕組みは 歌ってみたの録音が音割れする原因と直し方 に書いています。
イヤホンは低音まできれいに鳴らします。つまり、ショートでいちばん問題になる部分が、イヤホンでは見えません。
確認用の機材を買う必要はありません。手元のスマホを机に置いて、スピーカーで鳴らすだけです。1分で済みます。モニター環境の考え方は ヘッドホン・イヤホンの選び方 にまとめています。
繰り返しになりますが、正規化のある場所では音圧競争は成立しません。上げるほど、下げられたときに平坦になります。
他人の動画が大きく聞こえるとしたら、それは音圧ではなく、中音域の作り方が上手いか、単に低音が少ない(=スマホで損をしていない)かのどちらかです。
そのまま上から確認してください。
| # | 確認項目 | OKの基準 |
|---|---|---|
| 1 | スマホのスピーカーで再生した | イヤホンを外して確認済み |
| 2 | 歌詞が聞き取れる | 1メートル離れて聞き取れる |
| 3 | 消えているパートがない | ハモリ・コーラスが残っている |
| 4 | 尺が15〜30秒に収まっている | サビ1回ぶんで完結 |
| 5 | サビの半拍前から始まっている | 1音めが欠けていない |
| 6 | 終わりが拍の頭で切れている | ループしても違和感がない |
| 7 | 音声素材がWAVである | MP3を経由していない |
| 8 | トゥルーピークが−1.0dB以下 | 書き出し時に確認済み |
| 9 | 音量を自分で上げていない | 納品時のまま使っている |
| 10 | 使用した伴奏の権利を確認した | 公式配布または自作 |
10項目のうち、1と3が突出して重要です。ここだけでも必ずやってください。
多くの動画プラットフォームには、投稿された音声の音量を一定の基準にそろえる仕組み(ラウドネス正規化)があります。基準より大きい音源はアップロード後に自動的に下げられるため、書き出し時にどれだけ音圧を上げても、再生時の音量はほぼ横並びになります。
つまり「音が小さい」と感じる原因は、音量そのものではなく、他の動画と比べたときの聞こえ方の差です。低音に偏った音源はスマホのスピーカーで再生できる成分が少ないため、同じ音量でも小さく、痩せて聞こえます。対策は音圧を上げることではなく、スマホで鳴る帯域、つまり中音域の密度を上げることです。
作り直しまでは不要なことが多いですが、書き出し(マスター)は分けたほうが結果は良くなります。
長尺用のマスターは、イヤホンやスピーカーで最後まで聴かれる前提で、低音の量感と広がり、そしてダイナミクスを残して作ります。一方ショートは、スマホの内蔵スピーカー・モノラル・数十秒・音量小さめという条件で聴かれます。同じ素材でも、低域の処理と中音域の押し出し、リバーブの量を変えたほうが素直に届きます。
MIXを依頼する際に「ショート用の書き出しもお願いします」と一言添えるだけで対応してもらえることが多いので、依頼時に伝えるのが最も確実です。
歌ってみたの切り出しでは、15秒から30秒がもっとも扱いやすい長さです。理由は2つあります。ひとつは、最後まで再生される割合(視聴維持率)が長さに反比例して下がること。もうひとつは、サビ1回分がだいたい20秒前後に収まる曲が多いことです。
60秒使えるプラットフォームでも、まず30秒以内で1つの山を作り切るほうが、繰り返し再生されやすくなります。前奏や間奏を入れて尺を稼ぐのは、ショートでは逆効果になりやすいです。
サビの頭から始めるのが基本ですが、実務上は「サビ直前の半拍から」始めるとつながりが自然になります。いきなりサビ頭の音から鳴らすと、無音から急に音が立ち上がるため、耳が構える前に一番良いところが過ぎてしまいます。半拍から1拍ぶんだけ前を残し、そこから入ると、聴いている側の耳が音量に慣れた状態でサビを迎えられます。
逆に、Aメロから入れて「タメ」を作る構成は、最初の3秒で離脱されやすいため、フォロワーがまだ少ない段階ではおすすめしません。
動画に組み込む前の音声は、48kHz・24bitのWAVで扱うのが安全です。最終的な動画ファイルは、音声をAAC・320kbps前後・48kHzで書き出しておけば、アップロード後の再圧縮でも大きく劣化しません。
よくある失敗は、MP3を素材として使い、動画書き出しで再度圧縮し、アップロード時にさらに圧縮される、という三重圧縮です。圧縮は重ねるたびに戻せない劣化が積み上がるので、素材は必ず非圧縮(WAV)で持っておいてください。
再生側で自動的に下げられるため、稼いだ音圧はほぼ効果を持ちません。むしろ、音圧を上げるほど音の強弱がつぶれ、下げられたあとに「平坦で聞き疲れする音」だけが残ります。
同じ音量まで下げられたとき、強弱が残っている音源のほうが、はっきりと大きく感じられます。これは直感に反しますが、ラウドネス正規化がある環境では一貫して起きる現象です。音圧競争ではなく、抜けの良さで勝負するほうが結果が出ます。
スマートフォンの内蔵スピーカーは1つ、もしくは実質モノラルで再生されることが多く、その際に左右の音は足し算されます。左右で位相が反転している成分(いわゆる「サイド」成分)は、足し算されると打ち消し合って消えます。
ステレオ拡張の効果を強くかけたコーラスやダブリングが、スマホでだけ消えるのはこのためです。書き出し前に必ずモノラルで再生して確認し、消えるパートがあれば拡張を弱めてください。この確認は、ショート動画では長尺以上に重要です。
ショートの中で「フルはこちら」と文字を出すより、切り出した部分が単体で完結して満足度が高いほうが、結果的にプロフィールから本編へ流れます。数字の上でも、最後まで見られた割合が高い動画のほうが表示回数が伸びるため、まず「その30秒だけで良いと感じてもらう」ことを優先してください。
そのうえで、概要欄と固定コメントにフル尺のリンクを置く、プロフィールのリンクを本編に向けておく、という導線を用意しておくのが実務的です。概要欄の書き方は 歌ってみたの概要欄の書き方 に、伸ばし方全般は 歌ってみた投稿を伸ばすコツ にまとめています。
長くなったので、要点だけもう一度並べます。
| 覚えること | 理由 |
|---|---|
| 低音は鳴らない前提で作る | スマホのスピーカーは物理的に低音を出せない |
| 音圧は上げても下げられる | ラウドネス正規化があるため、上げ得はない |
| 戦うのは1k〜4kHz | スマホで最もよく鳴り、言葉のはっきりさを決める帯域 |
| リバーブは6〜7割に | 小さいスピーカーでは、残響がこもりに変わる |
| モノラルで必ず確認 | ハモリが消えるのは、イヤホンでは気づけない |
| 15〜20秒・サビの半拍前から | 最後まで見られやすく、1音めが欠けない |
| WAVで受け取る | 圧縮は重ねるほど戻せない |
ショート動画は、いま歌ってみたを始めた人が最初に人に届く場所になっています。フル尺を作り込んでも、最初に触れてもらえなければ聴かれません。
そして、ショートで必要なのは高い機材ではありません。スマホのスピーカーで一度鳴らしてみること。これだけで、大半の問題は防げます。
その一手間を、良い形で仕上げたいときは、遠慮なくご相談ください。
累計3,000曲のMIXで毎回確認している10項目を、自分で採点できるシートにしました。依頼文テンプレート集と宅録チェックシートもセットです。所要15分、メールアドレスだけで受け取れます。
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